されど、愛しい

輝く瞳に食らいつく日々

ミュージカル好きの少年が切り拓いた道

いよいよ、新作ミュージカル「ナイツテイルー騎士物語」初日が近付いてきました。ジャニーズが誇る王子、堂本光一とミュージカル界が誇る貴公子、井上芳雄の初共演となる本作品。光一さんにとってはキャリア25年を超える芸能生活でなんと初のジャニーズ公演以外の外部舞台への挑戦になります。

今回、オリジナルミュージカルでミュージカル界を牽引する井上芳雄さんと共に主演。堂本光一さんのファンとして、またミュージカルファンとして非常に楽しみで、道なき道を切り拓いてここまで来たか!という感慨にひたりながら光一さんがナイツテイルに出演するまでの軌跡を私感たっぷりにふりかえります。

光一さんがミュージカルに興味を持ったのはジャニーズ事務所に入る前。少年隊のファンだったお姉さんとお母さんに連れられて9歳から毎年少年隊のPLAYZONEシリーズを観劇、幼心に舞台に魅了されます。その後12歳でジャニーズ事務所に入り、堂本剛さんと二人で歌番組、バラエティ、ドラマ、コンサートと活躍の場をどんどん広げスターアイドルに上り詰めます。多忙を極める中でも「いつかミュージカルをやりたい!」将来の夢を聞かれるといつもミュージカルへの想いを語っていた少年が夢を叶えたのは芸能界に入ってから8年後の20歳の時でした*1

初ミュージカル主演作品「MASK 99*2」は、日生劇場で上演されました。この舞台で何を表現したいか?という質問に対して、当時の光一さんは「まだミュージカルになじみのない人もたくさんいると思うんです。そういう方たちに、ショーやミュージカルの楽しさをわかってもらえたらなって思いながらやっています*3」 と答えていました。。

光一さんのミュージカル初挑戦は好意的なレビューが寄せられ、特に作詞家、松本隆さんの感想「生の舞台に立った彼の全身が発散させるオーラの強さに驚かされた。」や、山下達郎さんの「堂本光一という人はとても小柄だけど、彼が一人きりでステージに立って見栄を切ると、もうほれぼれするくらい大きくみえる」というコメントに代表されるようにとにかく華がある!という評判があちらこちらから聞こえてきたのを覚えています。私の身近なところでも、宝塚ファンとして青春を過ごしてきて華のある人々への免疫があるであろう私の母親がMASKの観劇後に「何あのキラキラ!今日は眠れないかも!」と興奮していたのがとても印象的でした。

きっとMASKは堂本光一の舞台俳優としての行方を占う試金石だったのでしょう。このMASKは松竹主催だったにも関わらず東宝の松岡会長夫妻が招待され、その際に光一さんがカーテンコールの挨拶で「次は帝国劇場で演りたいです!」と公開おねだりしたという嘘のような本当の話があって、翌年からその後恒例となる「SHOCK」シリーズが帝国劇場でスタートすることになりました。光一さんは当時は最年少座長で21歳。

そういえばSHOCK公演二年目の公演後のロビーで、紙袋を片手にしたジャニーさんが招待客と挨拶をしているところに遭遇したことがあります。招待客の方々「驚いた!素晴らしかったです。光一くんキラキラしてました」と賞賛の言葉をかけられると、「良かったでしょ?凄いでしょ!光一!!!」と興奮したように返事をするジャニーさん。光一さんは「ジャニーさんに褒められたことがない」と公言していたのでその光景に遭遇して驚きました。ジャニーさんは光一さんの才能を信じて引き出して、周りに売り込んできたんだろうなと感じた瞬間でした。自分が深く関わった舞台に憧れて芸能界に興味を持った少年が、華のある青年に成長して自分の作り上げた舞台に主演し日本最高峰の劇場に初進出する…なんていうかドラマチック。

ところでSHOCK初演時には数年後に光一さん本人が「周囲からの雑音も多くあった」と語るように「ジャニーズの若造が歴史ある帝劇で舞台をするなんてありえない!」「アイドルの学芸会か!」という厳しい批判の声も多くあがりました。それもそのはずでジャニーズ舞台(=ジャニー喜多川作・演出の舞台)が帝国劇場で上演されるのはSHOCKが初めて。ジャニーズファンではない従来の舞台ファンからは冷ややかな目で見られていたのは確かです。

とはいえ、批判を跳ね返すようにチケットは即日完売、日本一チケットが取りにくい舞台として大成功を収め、光一さんは2005年から本人自ら脚本・演出そして劇中曲の作曲を手掛けるようになりました。フライングや階段落ちという派手なアクションに目を向けられることが多い本作品ですが、毎公演全力で挑み、限界を超えていく美しさが何よりも大きな魅力だと思います。「僕には何もないから」と光一さんはよく口にします。「歌芝居ダンス、自分は表現者としてすべてが秀でているわけではなく、すべてにおいて、これから先も日々勉強していかないといけない」と。ミュージカル俳優にはトリプルスレットと呼ばれる歌芝居ダンスの実力と、舞台映えする容姿が求められます。何もないから諦めるのではなく「何もないから努力する」のが光一流。歌芝居ダンスのレッスンを受けテクニックを身につける、身体作りをするなどのパフォーマーとしての努力に加えて、より作品を魅力的に見えるようにダンスナンバーを変更したり、衣装、照明など細部にまでこだわりブラッシュアップしていくプロデューサーとしての努力。それらの努力と天性の華が観客の心を捉え、1600回を超える上演回数を重ねて、SHOCKは東宝の看板作品の一つになっていったわけです。

そして迎えるナイツテイル!ナイツテイルが実現するまでの紆余曲折については現在発売中の日経エンタテイメント!2018年8月号を読んでいただければわかるので割愛しますが、夢や期待や資金がこめられた新作舞台です。実力派揃いの共演者。おそらく今まで歌ったことのないジャンルの曲や、踊ったことのないステップにも挑戦していることでしょう。もしかして批判されるかもしれない。それを覚悟で挑む舞台。少年隊の舞台に憧れた少年がアイドルになり、成長してミュージカル主演の夢を叶え、舞台と共に進化を続けてきた光一さんの新しい挑戦がどんなものになるのか!最高に楽しみです!!!

 

*1:ミュージカル初出演は1993年のANOTHER

*2:少年隊PLAYZONEシリーズの中でも傑作との評判が高い「MASK」をベースとした作品

*3:MASKパンフレットから抜粋